才能ない脳

かわいい自分を演出するためだったのにいつのまにやらゲボの掃き溜め

適応と破綻

 静岡市で暮らすようになってひとりでゲイバーに行くという経験を初めてした。それが意外と楽しくて。やがて習慣になって、気が向いた時には顔を出すようになった。そこでの人間関係は希薄なもので、店の従業員以外はあまり名前も覚えていない人が多い。ちやほやされることもなければ、ブスと罵られることもない。平日の客もまばらなバーは居心地が良かった。なによりカラオケの筐体があるのが良かった。追加料金なしで歌えるので、下手したらカラオケボックスよりも割が良かった。歌うことは好きだ、うまくはないけれど。人前で歌うことは普段ないので、なおさら気分が良かった。寂しくて暇を持て余す夜には自然とバーのことを考えるようになっていた。

 

 静岡市には先述した店の他にもゲイバーが数件ある。しかしながら、僕の偏愛するおてんばハウスはない。あったとしても狭い地方都市でのことだ、気まずくてとても行為には至れないだろう。ときおりおてんばハウスのことがとても愛おしく感じることがある。おてんばがしたいのである。